『きみはいい子』

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たま鑑
18日(土)、19日(日)の二日間、毎年夏休み恒例の東京私立学校展が、東京国際フォーラムで開かれました。
東京中の小・中・高校が勢揃いする合同相談会ですので、来場者も5万7000人以上あったとのこと。三輪田のブースにも、100名以上の受験生や保護者の方々が来てくださいました。

こういう合同相談会では、思わぬ再会もあります。
三輪田はご両親が私学の先生という方が多く、「うちの子がお世話になってます!」という感じでご挨拶いただいたくことがよくあります。
また、卒業生が他校の教員として説明会に来ていて、休憩時間に顔を見せてくれる、というケースも結構あります。
今回も多くの卒業生や保護者の先生方とお会いすることができました。
そんな中に、私がまだ若い頃に顧問をしていた華道クラブの部長さんが訪ねてくれて、20年ぶり?に再会しました。
もうすっかりお母さんになっていて、
「子どもが受験なので来ました。でも男の子なので、三輪田に入れられなくて、残念です…」と。
土曜日には在校生の保護者がいらして、「弟が受験なんです。男の子なので受験できないので残念です。」というお話を伺ったばかり。
確かに、残念です。でも、こればかりは、ねえ…。

三輪田の子どもたちは、卒業生も在校生もそうですが、恵まれた環境で育っていると感じます。
ご両親のたっぷりの愛情にくるまれて成長しているので、
母親になっても、自分がそうされたように、子どもに愛情を注ぎ、
よりよい環境で成長するようにと考えていくのでしょう。
三輪田の生徒を見る限り、親は子どもを愛し、成長を見守るもの、
親子関係は目に見えないしっかりした絆、と思っていましたが、
世間全般では、必ずしもそうではないようです。

先日、安田教育研究所の安田先生に勧められて、『きみはいい子』という本を読みました。安田先生とは、大学の大先輩ということもあって、仕事上のお付き合いだけでなく、ランチをご一緒したり、良い本を薦めていただいたり、公私ともにお世話になっています。

『きみはいい子』は、中脇初枝さんという30代の作家が書かれた本です。
横浜郊外の新興住宅地を舞台に、5編の短編がオムニバス形式で綴られていますが、それぞれの主人公が複雑に絡み合って、一つのテーマを浮かび上がらせます。
そのテーマとは、「母子関係」。

この作品は社会派小説ではなく、もっとふわっとした感じで
この深刻で重たいテーマを描いています。
5時まで家に帰ってくるなと言われ、雨の校庭にたたずむ子や、
子どもの時さんざん自分を虐待した母親が痴呆となり、その介護をする女性などがでてきて、
我が身に置き換えて考え込んでしまうような話なのですが、
読後の感想は意外にもすっきりしていて、
それでも、母親を続けよう、人を信じようという気持ちになります。

虐待やネグレクトを受けている子どもたちと、
どうしてもそれをやめることができない母親たち。

それでも、虐待を受ける子どもたちは、母親が手をさしのべてくれることを望んでいます。
自分が母親からたたかれるのは、自分が「わるい子」だからだと。
また、虐待をすることでかろうじて精神的均衡を保っている母親自身も、自分自身が同じような境遇で成長してきており、子どもの愛し方がわからないのです。
人は、自分の経験の中から、生きるための方法論を見いだすもの。
虐待する母親も、そのまた親も、社会のひずみの中であえいでいるのです。

すべての女性が、子どもを持った瞬間に「母親になる」とは限りません。
もちろん物理的には母親なわけですが、初めてお乳を含ませた時の感激がずっと続くとはかぎりません。
子どもを持つということは、母親の時間のかなりの部分を子どものために削くということ。
母親自身に精神的に余裕がなければ、それだけで疲弊してしまいます。
私自身、仕事をしながらの子育ての中で、実家の母や妹の援助無しでは、
物理的にも精神的にもここまでこれなかったと感じています。

でも、子どもを育てながら自分も育てって行く、母親になっていく、と考えてみたらどうでしょう?
なかなか思うようにならないこどもの現状を一緒に改善していくことは、
母親自身を成長させることにもなる。

「きみはいい子」とハグすることで、子どもの自己肯定感が高まるように、
母親も、「あなたはいい母親、あなたの子育ては大丈夫」と誰かから肯定される機会が必要かもしれません。
三輪田教育サロンは、そんな母親の子育てを共有する場でもあります。
先輩ママやパパからの経験談を聞いて参考にするだけでなく、親業に自信を持って頂く機会になるといいなと思います。

三輪田の生徒の様子を見る限り、虐待、ネグレクトなどは無縁の世界のようですが、この子たちが母親になったときに自分の子どもを充分愛し、慈しむことができるように。
もしかしたら、今また本当の意味での「良妻賢母教育」が必要なのかもしれません。
「良妻賢母教育」というとなんだか前近代的で、むしろ否定的にとられてしまいそうですが、「精神的にも母親になる覚悟」を持って大人の女性になることは、これからの社会へ巣立つ生徒たちにとって、大切なことだと思います。

先日発売された『プレジデント ファミリー』という雑誌で、
「塾講師が選ぶ中高一貫校」という特集が組まれ、塾の先生が薦めたい学校・保護者や生徒の入学後満足度の高い学校として三輪田がランキング入りしていました。ありがたいことです。
保護者の皆様と学校の両者で、生徒たちを暖かくくるんで、
自分が注がれた以上の愛情を、他者に惜しみなく注ぐことができる女性に育ってほしいと願っています。


         暑い毎日、三輪田祭の有志準備に奮闘する中3生