津波てんでんこ

投稿日:

たま鑑
昨日の夜、防災に関する講演会があり、風邪気味で体調は最悪だったのですが、とにかく行かなくちゃ!とばかりに参加しました。
東京都私学財団の主催の講演会で、東京都の防災課長さんの説明の後、
講演してくださったのは群馬大学大学院教授で広域首都圏防災研究センター所長の片田敏孝先生でした。
片田先生は長年にわたり釜石の津波防災教育の指導に当たってこられた方です。東日本大震災の時の「釜石の奇跡」の立役者として知られています。
 
今回の講演は「釜石の奇跡」がなぜ可能であったか、
つまり、どのようにして子ども自身が率先して避難を開始し、
幼い者やお年寄りの手助けをしながらいのちを守りぬいたかということを、
スライドなどを見ながら、詳しく伺うことができました。

3.11の後、三輪田学園でも防災に関する様々な対策を考えましたが、片田先生は、防災に関して学校が行うべきこととして3点をあげていらっしゃいました。
1.生徒に自分自身を守る主体的姿勢を育てること
2.繰り返し訓練を行うことで、体で行動を覚えさせる
3.生徒の保護者との信頼関係の構築、地域との連携体制の構築

しかし一番大切なのはなんと言っても生徒自身の主体性です。
片田先生のお話でも、家に帰っていた生徒が、地震後小さい弟を連れて高台へ避難し、九死に一生を得たケースなどが紹介されました。
今週の月曜日には、緊急地震速報の試験放送がありました。
ああいうときも、「訓練だから…」ではなく、「これがもし本当だったらどうするべきか」とちょっと考えてほしいなと思いました。
片田先生も講演の中で、災害に備える主体性を醸成する「姿勢の防災教育」が大切だが、これはなかなか難しいと話していらっしゃいました。
「脅しの防災教育」や「知識の防災教育」ではダメで、自然から恵みを受けるということは、同時に自然の危険に近づくことでもあることを理解し、
自然と共存しながら人々が共に手を取り合いながら生きる、
日本という災害の多い国に住む「作法」としての防災教育が大切と仰いました。
学校教育の中で防災教育をしっかりやっていけば、10年後にはその子どもたちが大人となって社会を支えるようになり、
さらに10年後には親となって、自分の子どもに防災を伝えるようになる。
学校の防災教育は、防災意識の拡大再生産という意味もありますね。


防災に関しては、ご家庭との連携も重要です。
釜石では子どもの死者は5名。(片田先生は5名ものいのちを救えなかったと仰っていました。)
4名はその時学校にいなかった子。
1名は避難途中でお母さんが車で迎えに来てしまった子。
車もろとも津波にのまれてしまったとのことです。
この例を見るまでもなく、今、学園では保護者のみなさまに、万一の時、お子様の引き取りは結構ですと申し上げています。
3.11の時は、大変なご苦労をしながら、多くの保護者の方々がお子様を引き取りに来てくださいました。
本当に有り難くて、頭が下がる思いでしたが、学校にいる間は学校が責任をもってお預かりする、だから、ご心配なさらないでください。
交通やライフラインが復旧したら、順次帰宅班でお返しします。

釜石には「津波てんでんこ」という言葉があるそうです。
津波の時は、まず自分が生き延びることを考え、親子であっても気遣いは無用ということ。
それは一方では、肉親を助けられなかった人への、慰めの言葉であったかもしれません。
このお話を聞いて、夏休みに中1追分合宿で行った鎌原観音堂の二人の女性の遺体を思い出しました。
あの二人もおそらく親子。老母を背負った娘は観音堂の石段の下まで来ながら、泥流にのまれてしまったのでした。
今回も、こんなケースはたくさんあったはずです。

一人一人がまず自分のいのちを守る、
そうすれば、自分が助けられるいのちがあるかもしれない。
自分が生き延びたことを喜んでくれる人がいる。
そうやって、いのちが繋がっていることを学んでいくことが、
防災教育の真の目的ではないでしょうか。