校長と読書

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たま鑑
今日は小学4年生・5年生対象に三輪田を知って頂くイベント「校長と読書してみよう」をおこないました。
校長になってから在校生への読書指導ができないので、せめて広報イベントで、という思いつきで昨年から始めた企画です。

昔(今から40年くらい前ですが)私が生徒だった頃、
「本を読むのは当たり前のことです。読書が趣味などと取り立てていうのはおよしなさい。」と先生に言われたものでした。
もともと本を読むのが好きだった私は、この三輪田の環境がとても気に入り、図書館や書庫に入り浸っていました。
今ではすっかり活字中毒?で、読みかけの本がないと不安でたまらないくらいです。

さて、今日扱った作品は、新美南吉作の『牛をつないだ椿の木』でした。
新美南吉は昭和初期の詩人・作家で、児童文学誌『赤い鳥』に優れた作品を発表していました。
若くして亡くなってしまいましたが、心温まる数多くの作品を残し、「北の(宮沢)賢治、南の南吉」と対比されます。
宮沢賢治の作品からは、時としてシニカルな印象や宗教的な匂いを感じますが、南吉はそういうものがなく、透明度の高い作品であると思います。

私は『赤い鳥』の作家の作品が大好きで、自分の子どもたちが小さかった頃、小川未明や椋鳩十、それに南吉の絵本や短編集を買ってきては、
読み聞かせをしていました。

最近は、南吉の作品は『ごんぎつね』が小学校の教科書に載せられているそうですが、それ以外はせいぜい『てぶくろを買いに』くらいしか読まれていないようです。もったいない。
そこで、今回は『牛をつないだ椿の木』を読んでもらおうと思いました。



人力曳きの海蔵さんが牛曳きの利助さんと一緒に、峠道の奥の清水を飲みに行ったところから物語が始まります。
清水は峠道から少し離れたところにあり、利助さんは牛を若い椿の木につないで水を飲みに行きました。
2人が戻ってみると、牛が椿の葉をすっかり食べてしまって、椿の木は丸坊主に。そばで地主のおじいさんがかんかんになって怒っており、利助さんはさんざんどなられてしまったのでした。
海蔵さんは、この道ばたに井戸があればいいのに、と思いました。

ある日、海蔵さんは、井戸掘りの新五郎さんに井戸を掘るにはいくらかかるか聞きました。30円(当時のお金で30円は、今の2~30万円くらいでしょうか)あればできると聞いて、さっそく利助さんに相談に行きます。利助さんは山林を売ってお金を儲けたことを知っていたからです。
しかし、利助さんは「自分だけが飲む井戸ならわかるが、みんなが飲む井戸を掘るお金を、自分が出すのは納得できない。」と断ります。
海蔵さんは他の人を頼らず、自分の力でお金を貯め、誰でも使える井戸を掘ろうと決心します。

さて、井戸はどうなったでしょうか?
続きは図書館にある新見南吉全集でどうぞ。

今日の校長と読書では、読み聞かせの後、読書シートのいくつかの質問に答えてもらいました。
また、最初からこの短編のタイトルは教えていなかったので、
「自分でキーワードを探してタイトルをつける」という作業もしてもらいましたが、これは今回の企画のポイントでもあります。
皆さんに意見を出してもらって、タイトルは『海蔵さんの井戸』がいい、
ということになりました。
これはこれで、内容を的確に把握したタイトルです。

次は本当のタイトルを紹介し、南吉はなぜ、『牛をつないだ椿の木』というタイトルにしたのか考えてもらいました。
参加した小学生の皆さんは、南吉の意図がちゃんとわかったようです。
さすが、読書好きの小学生!と感心してしまいました。

海蔵さんの行為は利他の行為。
今時こんな…と思うかもしれませんが、読んだ後、心が洗われる思いがします。
まだ読んだことのない人は、ぜひどうぞ。
タイトルの意味も、考えてみてください。