綿の実と保護者講演会

投稿日:

たま鑑

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昨夜の雨も上がり、今日は爽やかな秋晴れの一日です。

校庭の隅のプランターに、綿花がひっそりと実をつけ、はじけて真っ白い綿を見せているのを見つけました。

聞けば、家庭科の先生方が、授業の教材にするためにタネから育てたものだとか。実際に綿を摘んで糸を紡ぎ、布になる行程を生徒たちが体験したそうです。私が今日見つけた綿の実は、既に摘んだ残りとのこと。それでも、真っ白い綿の実は、他の色をはじくように際立って見えました。

木綿の服は着ていても、その原料がどういうものなのか見たことがない生徒たちに、育つところから観察させることができる、素晴らしい教材だなと感心しました。

今日は保護者会。6月と11月の保護者会は、一日かけて学級懇談会や個人面談など、保護者の皆様のためのメニューが組まれます。

毎年11月の保護者会では学級懇談会の後、保護者の皆様の参考になるようなテーマを選び、講師の先生をお願いして講演会がおこなわれます。

今年の講演会では、法政大学文学部心理学科教授の渡辺弥生先生にお話しいただきました。タイトルは「親子のコミュニケーションの心理学~しなやかでやさしい心が育つように~」。

渡辺先生は臨床発達心理学や学校心理学がご専門の方ですが、少しも堅苦しい話ではなく、隣の席の方とのワークショップも交えながら、あっという間の楽しい90分でした。

講演はまず聞く姿勢を作るるところから始まり、「ワクワクしながら聞くことで話がすっとはいってくる。」

これは授業の受け方でもいえることで、「今日の授業は何かな?」という期待感がなければ、頭に入るところか子守歌になってしまいます。

渡辺先生は、思春期の子どもたちと親との良好なコミュニケーションの取り方として、基本姿勢「聴く」の大切さを強調なさっていました。「聴く」=「注意・注目する」=「関心を持つ」がコミュニケーションの基本になるのです。

また、レジリエンス(困難な状況から立ち直るための力)を蓄えるためには「心の筋トレ」が必要で、そのためには「I am~(私は~である)」「I can~(私は~ができる)」「I have~(私は~を持っている)」「I like~(私は~が好き)」を毎日いくつか考えて、自己肯定感を高める必要があると仰いました。友人関係がうまくいかなくて悩んでも、私は何でも話を聴いてくれるお母さんがいる、と思えれば、そこで踏みとどまることができるでしょう。お話を伺いながら、自分が誇れる何かを、思春期にしっかり掴んでおくことが大切だと思いました。

そのためには親自身のレジリエンスを高めること、物事を何でも悪く考えずによい方へとリフレーミングする習慣をつけること。他人と比べず、その子の伸びしろを考えた目標設定をして、子どもの成長に寄り添っていくこと。

また、子どもたちの自分で自分を見る力「メタ認知」を育てて行くことで、自分の弱点を知り、その克服に向かう準備ができること。

メタ認知やコンピテンシーの育成は、今進められている教育改革の要でもあります。変化する社会の中で、思いもよらないリスクと思いがけないチャンスに翻弄されるであろう子どもたちに、逞しく生きる力をつけるには、中高時代に様々な体験を積ませ、自己肯定感を高めていくことだと、改めて思いました。

中高の子どもたちは、真っ白い綿の実と同じ。

紡ぎ、生地となり、染色・縫製されて服になるのはまだまだこれからです。完成したデザインはまだまだ見えていないにせよ、着実に一歩ずつ行程は進んでいる。

高校を卒業するまでに、鮮やかな三輪田色に染まった美しい服が完成するように、学校は綿の木に水や肥料をやり続けるのだなと思いました。

「教育は農業と同じ。発芽し、育つ力はタネ自身が持っている。学校や周囲の大人がするのは、根を張りやすいように深く耕し、水と肥料をやり、十分に陽に当てること」と仰っていた先代校長の西先生の言葉を思い出しました。