Education

ESD for SDGs

三輪田学園では、ESD for SDGsに積極的に取り組んでいます。

学年の取り組みとして、社会科読書(中学3年)、道徳・ホームルーム(中学各学年)、総合的な活動の時間(中高各学年)を利用しています。また、その発展型として希望する生徒が放課後の時間を利用して、法政大学との高大連携プロジェクト「SDGs実践講座」、外濠フレンズ、ブルーアースプロジェクト、模擬国連会議といった活動に参加しています。また、生徒会も、Table for TwoやWFP(国連世界食糧計画)、UNICEF(国連教育科学文化機関)、国際赤十字、国境なき医師団などの活動に協力してきました。

このように三輪田学園が学校をあげてESD for SDGs に取り組んでいることの背景には大きく2つの考え方があります。1つは、SDGsの目標を「他人事から自分事に」という考え方、もう一つは、「子どもたちは社会と、子供たち自身の将来から信託された存在である」という考え方です。世界が抱える様ざまな課題の存在を知りつつも、それを遠い世界で起きている自分とは無関係の問題ととらえるのか、それとも私が生きているこの社会・世界の問題ととらえるのかによって、取り組みとその結果としての未来は大きく異なってくるはずです。自分事にすることで、その課題解決に積極的に取り組むだけでなく、自己と課題を結びつけ、自己と世界をつなげ、そして自己と自己の未来に橋を架けることができるのです。そう、それは生徒自らが生きる未来の創造者となることです。これは私たち三輪田学園の願いです。

  • ESD(Education for Sustainable Development)は、「持続可能な開発のための教育」と訳されます。現在世界には、飢餓や貧困、戦争や紛争、人権侵害、環境破壊といった様ざまな問題があります。ESDは、こういった課題を自らの問題として捉え、その課題解決に向けて思考し、判断し、行動する子供たちを育成する教育活動です。
  • SDGs(Sustainable Development Goals)は、「持続可能な開発目標」と訳され、2015年に国連で全会一致で採択されました。SDGsは2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。SDGsには、「1.貧困をなくそう」「2.飢餓をゼロに」「10.人や国の不平等をなくそう」といった17の目標があり、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。 

社会科読書と卒業論文

社会科読書は中学3年の公民の一部で、1学期と夏休みに4ブロックの課題図書をそれぞれ1冊以上読み、レポートにまとめます。また、夏休みからは自分の興味関心のあるテーマを見つけ、そのテーマを掘り下げ、卒業論文にまとめていきます。卒業論文のテーマは児童労働やストリートチルドレン、地球温暖化や海洋プラスチック汚染、障がい者福祉、エネルギー問題、核廃絶に向けた取り組みなどまさに、SDGsの目標そのものです。卒業論文の完成までには、何を問題とするのか、必要な情報をどのように集めるのか、問題を解決する方法など、さまざまな課題に直面しますが、担当の教員が一対一で指導します。卒業論文が完成すると、生徒、教員、保護者の前でポスターセッション方式による発表を全員が行います。

社会科読書を通じて、生徒はこの世界で起きている現実を知り、理解を深めるようになります。また、卒業論文やレポートにまとめることで、論理的思考力を身につけます。でも、それだけではありません。その現実の向こうに目指すべき理想を抱き、自分自身の未来を切り拓いていく力を身につけるのです。

1ブロック人権・民主主義・憲法、人間の生き方
2ブロック戦争、核兵器
3ブロック公害・環境問題、エネルギー問題
4ブロック国際協力・ボランティア・福祉

【近年の卒業論文のテーマ例】

  • 女性が社会を変革する~ジェンダー・男女平等~
  • いじめについて考える
  • 児童虐待をなくすには
  • 選択的夫婦別姓実現に向けて
  • 殺処分される動物の実態と対策
  • 沖縄と米軍基地問題
  • 紛争終結後の加害者と被害者の和解に向けて
  • プラスチックによる海洋汚染
  • 江戸時代と現在のリサイクル事情
  • カカオと児童労働~私たち日本人に何ができるか~

SDGs実践講座

2019年より、高大連携協定を結ぶ法政大学との間で「持続可能な社会 SDGsの実現に向けて」という新たな取り組みが始まりました。法政大学人間環境学部の先生をお招きし、国際社会が抱える問題の解説、質疑応答といった双方向型授業として展開されます。

これからの社会に必要な力として、教科の枠にとらわれない学びの場が必要であること、また、その道のプロフェッショナルによる「本物」を体験することで、学校での学びをより豊かなものにすることが狙いです。

生徒達の感想に「難しい、けど、おもしろい」という声がありました。この言葉は、生徒自身が、課題と真剣に向き合いながらも、1つ上のステージへと上ったことの証しといえます。

国際社会が抱える問題について共に考え、最新のアカデミックな授業を体験することで、問題解決に向けての主体的な態度を養い、論理的思考力を身につけ、自らを高めていくこと、それは自分自身の将来を切り拓いていく力にもなるといえます。

【テーマ例】
「貧困と格差をなくせるか」
「持続可能な社会で選ばれる企業」
「生物多様性条約の論点」
「国際平和の追求」

 

模擬国連

模擬国連とは、実際に起こっている国際問題を国連会議の形で討論する学生の学びの場です。生徒は事前に自分に割り当てられた担当国の大使として、その国の地理、歴史、経済などの情報を集め、英語と日本語でプレゼンテーションの準備をします。そのためには事前の準備が必要で、模擬国連参加のための模擬国連講座には現在約50名の中高校生が参加しています。

各大使は自国の利益を考えながら、他国との対話を通して現実的な解決策を探っていきます。その中では協調や妥協が求められます。他国の意見に耳を傾ける一方で、交渉相手国に納得してもらえる材料を提示しながら決議案を作成しなければなりません。そしてその決議案の採択をもって会議は終了します。

対話と協働作業を通じて学ぶ力は問題分析力や論理的、戦略的思考力にとどまりません。生徒は自国の意見を聞いてもらうためには、英語力やプレゼンテーション力に加え、十分なリサーチに基づく根拠を示すこと、また、いかに交渉相手国との信頼関係を築いていくか、ということが大切であることに気づきます。実際に議場を経験するとうまくいかないことのほうが多いのも事実です。しかし、他国との合意形成によって提出した決議案が会議で採択されるなどの成功体験や、会議中の小さな進歩は確実に次への意欲につながっています。

三輪田学園の教室から、世界とつながり、未来を創る担い手が着実に育っています。

道徳・ホームルーム

平和学習と中3ヒロシマ修学旅行

三輪田学園では、中学各学年で平和学習を行っています。

中学1年では、JVC(日本ボランティアセンター)元職員の清水俊弘先生をお迎えして、地雷廃絶に向けた取り組みや、核廃絶に向けた取り組み、今も各地で起こる紛争とその解決に向けた取り組みをワークショップ形式で学びます。ワークショップは、生徒や教員、時には保護者も参加して展開され、参加者には各国の政治指導者や国連機関、国際NGOや被害者など様ざまな役割を与えられます。それぞれの立場から発言することで、問題の複雑さや解決の困難さなど課題の理解を深めます。また、単に複雑さや困難さを知るだけでなく、課題解決に向けた具体的な取り組みや成功事例が紹介されることで、生徒達が主体的に考える契機にもつながります。

中学2年生では、ビキニ環礁での核実験で被爆した第五福竜丸の元乗組員の大石又七氏の被爆体験を伺い、江東区の第五福竜丸資料館を訪ね学芸員のお話を伺うなどして、核兵器の脅威や非人道性、被害者が受けた差別などについて理解を深め、中3のヒロシマ修学旅行につなげます。

平和学習の1つのゴールが中3ヒロシマ修学旅行です。事前授業では、文学、物理や化学、歴史や現代社会など様ざまな角度から核兵器や核がもたらす被害の実態について学びます。また実際に広島の地では、平和記念資料館や被災した小学校を訪れそこに展示されている様ざまな展示品を見学することで、一つ一つの遺品の背後にある物語に思いを至らせます。また、平和記念公園内にたくさん建立されている慰霊碑を巡ることで、被害の大きさを実感します。中3ヒロシマ修学旅行の大きな意義の1つに、被爆者からの証言を直接伺うということがあります。被爆から75年を迎え、当時の被爆者が毎年減少している中、毎年生徒達は、自分たちが直接お話を伺える最後の世代としての責務を自覚して被爆者から「平和のバトン」を受け取ります。被爆者から受け取った「平和のバトン」を手に、生徒たちは平和の使者としての歩みをスタートさせます。