ブログ

ほぼ月刊 牧雄チャンネル 第6号 二学期終業式でのメッセージをお届けします。

校長ブログ牧雄チャンネル

校長ブログ牧雄チャンネル

皆さま、こんにちは。

長かった2学期が終わりました。在校生の皆さんにとっては待ちに待った冬休みが来ましたね。今年もサンタさんが来てくれるといいですね。とは言っても、再試や追試、クラブや補習、理科実験教室やキャンパスツアーなどのイベントがあり、休みとは言えない生徒が少なくないですよね。高校3年生の皆さんは、大学受験に向けてのラストスパートですね。校長の私を含め、三輪田学園の全教職員、在校生のみんなが応援しています。「フレー、フレー、高3生!」

また、こちらをご覧の方の中には、中学受験生やその保護者の皆さまもいらっしゃると思います。皆さんにも「フレー、フレー、受験生!」

 

では、ここからは、2学期終業式でお話したことを掲載いたします。

 

【2022年度 二学期終業式のメッセージ】

 

サッカーワールドカップはアルゼンチンの優勝で幕を閉じました。今回で7回目の出場となった日本代表はこれまでたどり着いたことのない「新しい景色(ベスト8)」を目標に掲げてワールドカップに臨みました。グループリーグでは、優勝経験のある強豪、スペインやドイツと同じ、いわゆる「死のグループ」に入ってしまった日本。日本の決勝トーナメント進出を祈りつつも、心のどこかでグループリーグ敗退を予想していた人は少なくなかったのではないでしょうか。私もその一人でした。日本代表選手の皆さん、森保監督ゴメンなさい。

しかし、選手・監督・スタッフは全く違っていました。彼らにとっては、決勝トーナメント進出はもちろん、「新しい景色」であるベスト8進出は必然の未来でした。

 

今日は、ドイツ戦で鮮やかな決勝ゴールを決めた浅野拓磨選手のことをお話します。

浅野選手は、決して裕福ではない家庭に育ちました。7人兄弟、9人家族の家庭は貧しかったようです。サッカーのスパイクを買うことができず、友達のお下がりをもらうこともあったそうです。浅野選手自身、空き缶を集めてはお金を稼ぎ、お母さんに渡すこともあったそうです。浅野選手はサッカーの名門校に進学します。全国大会の常連校ですから当然、遠征・練習試合がよくあります。宿泊費用がかかることもあります。家計の厳しい浅野選手は遅れて参し、試合後、とんぼ返りするということもあったそうです。そういった自分のせいではない困難がしばしば浅野選手の人生に立ちはだかりました。自分のせいではないのに、自分にはどうすることもできないのに・・・ということです。

 

浅野選手は、とにかくサッカーに打ち込みました。あるインタビューで、サッカーができることが幸せだと答えています。浅野選手は前回ロシアで行われたワールドカップでは代表に選ばれず、今回の代表入りを目指して毎日毎日努力を重ねてきました。その彼がドイツ戦で見事な決勝ゴールを決めました。試合後のインタビューで浅野選手は次のように答えました。

「誰もが奇跡と言うかもしれないけれど、僕は4年前から1日も欠かさず、こういう日を想像してきた。」「4年半前から狙ってました。あのシュートを狙ってました。」

 

一昨日(12/18)の日曜日、三輪田学園を会場に、朝日新聞が主催する、オリンピック・パラリンピックのメダリストや世界的な元アスリートが子どもたちにスポーツを教える「朝日新聞スポーツ チャレンジA」というイベントが行われました。チャレンジAには、東京パラリンピックのボッチャの銀メダリスト、高橋和樹選手もいらっしゃいました。高橋選手は幼い頃、柔道で全国大会に出場するほどの選手でした。しかし高校生の時、柔道の練習中に首を骨折し、以来、首から下が全く動かなくなってしまったそうです。ここにも、何故私に、何故このような不幸が降りかかるの、受け入れることのできない、しかし現実です。そういうことを抱えながら生きた人がいます。

高橋選手は、チャレンジAのトークイベントで、東京パラリンピックの前のリオパラリンピックでの敗退がこれまでの人生の中で最も悔しかったと話しました。柔道で怪我をしたことやそれによって首から下が動かなくなったこと、その先の夢が絶たれたことではありませんでした。その悔しさを絶対に忘れないために、5年間、毎日毎日リオパラリンピックの入場曲「パイレーツオブカリビアン」を欠かさずに聞いて自分を奮い立たせたそうです。

 

きっと皆さんにも、自分のせいではないのに、自分にはどうすることもできないのに、どうして私に、という困難や不幸の一つや二つはあるでしょう。それは決してあなたが悪いのではありません。誰かがその困難を解決してくれる場合もあれば、時間が解決してくれる場合もあるでしょう。でも、それらでは解決できないこともあります。だから悩みは深く苦しいのです。そのような時、もしかしたら、熱中することを見つけることで、そのような、受け入れがたい現実にとらわれ続け、そこから一歩も進むことができない自分を忘れることができるのかも知れません。夢中になれるものを見つけることで、自分に降りかかる困難に悩み、それに費やしてきた時間から解放されることがあるのかも知れません。あなたの心が成長することでそのような現実がちっぽけに見えることだってあるのかも知れません。

お二人に共通するのは、未来を夢見て、未来を想像して今を生きる、毎日を生きる、つまり、「未来からの逆算」という生き方です。

ボッチャの高橋選手はリオパラリンピックの悔しさを晴らすべく、4年(5年)後の東京パラリンピックを夢見ていました。2018年のワールドカップに出場できなかった浅野選手は、カタールでのワールドカップを夢見て、そこで自分が試合に出てゴールを決めきることを、勝利することを、決勝リーグに進出することを、そして「新しい景色」を見ることを4年前から一日も欠かさずに想像してきたというのです。

サッカーワールドカップ日本代表は、世界の多くの人の予想を覆すかたちで、グループリーグを首位で通過し、決勝トーナメント進出を決めました。そして、世界中から驚きと賞賛を集めました。まさに、「ブラボー」でした。決勝トーナメントのクロアチア戦では、延長戦で決着がつかず、勝負はペナルティーキック戦へ。しかし、4回目の挑戦となった今回も、待ち望んだ「新しい景色」を見ることは叶いませんでした。

試合後、森保監督は選手とスタッフを集めて円陣を組み、次の言葉をかけました。

「ベスト16の壁は破れず、『新しい景色』を見ることはできなかったと言われるかもしれないが、ドイツやスペインというワールドカップで優勝した経験があるチームにも勝てるという『新しい景色』を見せてくれた」

 

さあ、皆さんにとっての「新しい景色」とは何でしょう。あなたには「新しい景色」と呼べるものがありますか。年明けまでの宿題にします。

 

また、今回に限ったことではないのですが、ワールドカップで話題になったことといえば、日本のサポーターによる試合後の観客席の掃除、選手・スタッフによるロッカールームの掃除があります。このことは世界中で賞賛され、報道されました。「日本ってすごい」という世界各国からの賞賛の声とSNSによる拡散が、日本のメディアによって逆輸入的に紹介されました。「私たちってすごいんだ」という私たち自身による私たちの再発見・再認識につながったのではないでしょうか。

サポーターも選手やスタッフも賞賛を求めて掃除をしたわけではありませんよね。公共スペース、みんなが使うところは、使った人がきれいにするという考え方は、日本では当たり前の文化といってもいいのかも知れません。そういった掃除の文化は、これまでも、そしてこれからも、学校生活を通じて継承したいと思います。

 

ところで、生徒が学校の掃除をする国や地域は、日本や台湾などごく一部のようです。起源の一つが寺子屋です。寺子屋は、お寺などから始まりましたが、仏教には修行の一つに掃除があります。そこで、寺子屋・学校と掃除が結びついたという説があります。

また、学校で掃除を教えることで、①整理・整頓ができ、清潔感を身につけることができる、②公共心、みんなのものを大切にする心を学び、③勤労の心、しなければならない勤めに励む心を学び、④責任感、教室やトイレ等各自の分担箇所の掃除に責任を持ち、⑤感謝の心が育つといった分析があります。これらは、勉強だけでなく、一人の人間としての成長を育む三輪田学園としても大切にしたいと考えています。

今日は今年最後の大掃除の日でもあります。一年間お世話になった教室やトイレ、そこにはあなたが勉強した机、あなたを支えた椅子、たくさんのことを学んだ黒板、腰掛けた便座があります。一年間お世話になりました、ありがとう、そういう感謝の思いを込めてお掃除をしたいものです。この後、よろしくお願いします。

ワールドカップでのサッカーの試合を通じて、多くの人に喜びと感動を与えてくれた選手の皆さん、監督・スタッフの皆さん、そして、使ったところは、自分たちできれいにするという掃除の文化を伝えてくれたサポーターの皆さん、お疲れ様でした。そして、「ブラボー」

では、ブラボーつながりで、この後、この1年、様々な挑戦をしてきた生徒の皆さんをブラボーと賛えましょう。毎日、お掃除を頑張っているあなた、遅刻や欠席をしないで登校しているあなた、毎朝元気に挨拶をしてくれるあなた、皆さんにもいいことがありますように。その他にも皆さん一人ひとりが様ざまなことに頑張っていると思います。そういう皆さんは、私たちの誇りです。ではこれからこの一年、大会やコンクール、コンテストなどで頑張った生徒をご紹介します。呼ばれた団体、個人は起立して下さい。みんなで拍手でたたえましょう。

 

( 省 略 )

 

今、名前をお呼びした方だけでなく、ここにいる皆さんも何かに頑張りましたよね。私からは皆さんに、そして皆さんは自分自身に拍手を送りましょう。「ブラボー私」。ではみなさん、この一年間お疲れ様でした。そして、三輪田の生徒でいてくれてありがとう。

 

【終業式後にあった嬉しい出来事】

終業式の後、廊下ですれ違ったある生徒たちから、「校長先生もお疲れ様でした。」と労いの声をかけられました。その言葉の後にもっと嬉しい言葉が続きました。「先生が校長先生でいてくれてありがとうございます。」少し早めの、しかし、最高のクリスマスプレゼントです。